七夕

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「着いたよ」そう渉の声がしてさっき居た街中の明かりはすっかり下に見えて、周りは暗い山奥に来ていた。「あー、東京タワーがあんなに小さく見える」少しだけ涙が出ていたせいか声が震えた。「なー、2年前の今日話したの覚えてる?」2年前?渉が転勤したころの・・・7月7日・・・なんだったけ。 「おまえー忘れんなよ」笑いながらそういうと、「上見て?」優しい声の誘導に空を見あげる。 「2年前の7月7日、電話してたんだよ。今日七夕だなーって」その言葉に、ハッとした。 そうだ、あの年も雨が予報通り降ってて夜にやんだんだ、今日みたいに。「2年後、また逢えたらお前の小さい頃短冊に書いた願いかなえさせてよ、俺彦星様だから織姫様の願いかなえてやるよって言ったんだよ」ヘラヘラ笑いながら渉は星空を見ながら私に言った。「星蘭、お嫁さんになりたいって書いただろう、お前結構中身乙女だからな」そう言いながら、手をぎゅっと握ってくれた。私は少しだけおかしくて、でも少しだけ渉が私という人間をわかっていてくれたのが嬉しくて、切なくて愛おしくて星を見ながら涙があふれた。涙できらきら光る星がにじんで見えた。「幸せにしてくれなきゃ、許さないんだから」涙であふれた笑顔で渉を見上げた。「俺ね、2年前星蘭を連れて行かなかったこと、ずっと後悔してた。でも、あの頃のお前いつも無理に笑って、たぶん俺の事好きじゃなったのに仕事でミスして飛ばされる俺のそばにいてくれたでしょ?その時、俺お前の事絶対守れる男にならなきゃって思ってたんだ。二年前の今日、俺プロポーズしたのに、普通に、そうだねーみたいな返事で俺ふられたと思ってたし。」少しだけ意地悪そうな笑顔で頭をくしゃくしゃにしながらいつも以上に口数の多い渉を愛おしいとおもった。
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