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そうだ、この男は七氏である。思考もすべて七氏なのだ。
男は続けた。
「お前だっていらないものは切り捨てるだろう。今朝切り落とした兎の耳だってお前はそう言って切り落としたはずだ。その前の犬だってうるさいからバラバラにしたはずだ。俺が二人もいるのが俺は気に入らない。だから必要ない」
家の扉が開いた音がする。
階段を上る数人の足音。
「……嘘だろ」
七氏は震えた。
合鍵は庭の鉢植えの下にあるが、それを知っているのは七氏一人である。
しかし今は一人ではない。
部屋の扉が開いた。
「俺の体を返せ」
無表情な、あまりに無表情な自分の顔が一斉に七氏を見た。
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