増殖人間

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「二つもいらないだろ……」  七氏は指を切った。 「切った」といっても普通の切り傷じゃない。自宅の電動カッターでバッサリと指を切断してしまったのだ。  七氏は危険な工具を使うのに慣れていたが、弘法にも筆の誤り。 失敗する事はある。 だが、驚いたのは傷口からニョキニョキと新しい指が生えてきたことだ。  どういうことだ。 俺の体はヤモリの尾のように、切れたところから新しくが生えてくるのか。  七氏は知り合いの研究者に会いにいった。 「なんだおまえか。僕は今、新しい発明の途中なんだ」 白衣を着た中年男が忙しそうに言った。 「お前、人間の体に詳しいんだろ」 「ああ、そうだ」 「生命の神秘だ。これを見てみろ」 七氏は自分の指をみせた。 「なんだよ、ただの指だろう」  ……そうだった。 今は傷一つない。これでは指が生えてきた事を証明できない。  しかし、七氏は恐ろしい男だ。  いきなり近くの裁断機に指を突っ込むと、自分の指を切り落とした。 「ばかやろう、何してる!」 研究者が駆け寄る。 七氏の指はすぐに再生した。
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