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がんがんと外からの強い衝撃で、ぼくの視界がぐらぐら揺れる。
ぼくは目が覚めるより先におどろいてびゅんと後ろに飛び退いた。
目の前に、ひとの顔。
しばらくあっけに取られたけれど、ぼくは、ぼくが生きてることに1番おどろいて、それからすごく喜んだ。その場でくるくる回ったよ。
でもここは、どこだろう?
前にいたところよりも随分狭いきがするぞ。
「おいおまえ、おいおまえ、」
ぼくのいる、しばらく下から声がする。
近くに行くと、変な生きもの。
石ころみたいに見えたけど、2つの薄い岩の板が、ひっつきもっつきぱくぱくしている。
「どこの海から来たんだ、来たんだ、」
「海ってなんのことだろう。ぼくはそこを知らないみたい。」
ぼくがそう言って答えると、そいつは岩をぱくぱくさせて、笑う、笑う。
「ようしょくだ、ようしょくだ、」
「ようしょくってなんのことだろう。ぼくはそれを知らないみたい。」
「にんげんに、食べられるため産まれたんだ、産まれたんだ、」
ぼくはくるくる回ったよ。わからないから、回ったよ。
そうしたら目の前にある、ひとの顔が、きゃあきゃあ笑ってこういった。
「あたし、おさかな、だあいすき!!」
僕はぐわぐわ揺れながら、ちょっとだけわかった気がするよ。
「死ぬために、つくられた魚。かわいそう、かわいそう、」
死ぬためにつくられたなら、ぼくっていったい何なんだろう。
上から網が降りてくるよ。
あなたに初めて会うけれど、あなたはぼくを好きなんだね。
上から網が降りてくる。
ぼくは、ぼくは、あなたのせいでしぬけれど、あなたのおかげで生まれたのかな。
網にからだがすくわれる。
それでもし、あなたがぼくを好きなのなら、ぼくはあなたを好きじゃないけど、これも悪くないのかなって思えるよ。
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