178人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
序章
沢泉準は、警視庁の自室で準備をしていた。
今日は、9時に世田谷署へ行き、設置される捜査本部で捜査方針を決めなければならない。
「強盗及び殺人未遂」..本日未明 いわゆる「コンビニ強盗」が、立ち向かってきたバイトの店員を刃物で刺して逃走中なのである。
刺されたのは左太ももで命に別状はないが、被害者のバイト君から「ぶっ殺してやる!」と犯人が言ったという証言が出たので「殺人未遂」として捜査することになる。そのため、所轄の世田谷署に捜査本部が設置されることになったのだ。
(まあ、すぐに捕まるだろう)
沢泉は楽観していた。
(いや、もう引っかかってるかもな)
既に現場のコンビニからの逃走経路として予測される主な道には検問を設けてある。
「最寄りの駅とは逆の方向に走って逃げた」 という証言が気になっていた。
名目的には「強盗殺人未遂」だが、送検の段階で「強盗傷害」か「強盗致傷」になるだろう。金額も約23万円と「強盗」としては..金融機関などを狙った事件に比べれば少額である...にも関わらず、なぜ、早々に捜査本部が設置されたのか?
...その意味のほうが重要だと沢泉は考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!