第四章

1/3
178人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ

第四章

「野上係長を呼んでくれ」 沢泉がそう言った瞬間(とき)、ゆかりの表情が ふっと緩んだ。 「ちょっと待って」 「うん?」 「桜木君を使いましょう」 「桜木?この捜査を事実上指揮しているやつか。できるのか?」 「一係のエースよ。野上さんも信頼しているし...後輩なの。私からうまく話して捜査を続行させるわ」 「なるほど、まあ、そのほうが角は立たないが..」 ゆかりは、昔から「根回し」がうまい。人間関係の構築が得意なのだろう。 「まかせて」 「まかせた」 ゆかりは昼まで待った。逮捕状が請求されるのでは..とやきもきしていたが、未だ被疑者が「完落ち」ではない と桜木が判断しているのだろう。さすがに「エース」だ。何か腑に落ちない..と感じているのかもしれない。  12時少し前、桜木が取調室から出てきた。拘留中の被疑者には昼食&休憩を取らせる義務が警察にはある..中岡は 正確には「拘留中の被疑者」ではないが。。 12時から約一時間は 桜木も休憩時間だ。 ゆかりは、さりげなく近づいて 「ちょっと情報があるんだけど、お昼 おごってくれない?」 と、桜木だけに聞こえるように言った。 「え?はい、わかりました」     
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!