風下のライオン

秒針が何度傾いたか凝視しなくてはわからないほどの時間が経ったそのとき。

彼の口が動いたようだった。

その姿に彼女はゴクリと音を立てそうになるほど息を飲み込んだ。
そして目尻が切れそうになるほど目を見開いた。

それでも彼は言葉を発しない。
彼女はいてもたってもいられなかった。
なんとやるせないことか！

――結論だけでいい･･････。

この風下で狙いを定め、息を潜めているライオンが本能の波に切り崩されていくかのように、彼女の身体は彼へと近づけられていく。

それを力づくで押さえつけるかのように彼女は自分の膝をまっすぐ見ることに努めた。

しかし膝に顔を向けることができても視線だけは彼から外すことはできなかった。

彼女は不安げに見つめていた。

彼の口が動きをやめたのに、肝心の言葉が聞こえてこない。

なぜ？

次の瞬間、シャンパンのコルクが音を立てて抜けるかのように押さえきれなくなった彼女は決して自分からは言い出さないでおこうと決めていたその一言を彼にぶつけたのだ。

短いが、彼女の疑問がすべて解決するこの一言を。