風下のライオン

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「おいしい・・・・・・?」 カレーライスを彼の前に出してから初めて彼は彼女に目を向けた。 表情は、どっちなの!? 「すっごくおいしいよ。」 予想した以上の言葉だった。 洗濯機の渦みたいな、なにかわからないうねりの中で溺れた私を救ってくれたような彼の言葉。 気がつけば涙が零れ落ちていた。 嬉しいという気持ちに、不安と恐怖芯から解放された安堵感が追い打ちをかけた。 止めようと思っても止める術を持ち合わせていなかった。 だって史上初めて、彼女は大切な人に手料理を作ってあげたのだから。
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