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そう思ってケットシーとのセットを微笑ましい気分で見つめていると、赤くなったディオンが耳まで真っ赤に染めてフイッと横を向いてしまった。
翠の瞳をかたく閉じ、まるで何かに必死で耐えているかのよう。
……そんなに恥ずかしかったのか。笑って悪かったかな……。
「ところで、そのにゃんこ、どうするの?」
仕方ないので、率先して話題をふってみた。
ついでに、そっと手を伸ばしてみると、ケットシーは意外にもあっさりとボクの手に擦りよってくる。
うわぁ、ふわふわサラサラ~新触感~……。
伝わる振動に気付いたらしい武骨な手が、躊躇いながらも開いた。
すとん、とリンゴほどの重さが落ちてくる。
「ふふ……可愛い……」
ボクの手のひらの上にちょこんと乗った子猫。尻尾が二俣になっている意外は普通だ。
そういえば……ケットシーって、「猫又」って和訳されることもあるモンスターだったかも。「長靴をはいた猫」だよね、確か。
胸に抱いてそっと撫でれば、シルバーのケットシーはボクの顔をジッと見て……それから、心地よさげに蒼い瞳を閉じた。
コロロロロロと喉を鳴らす軽やかな音が響く。
「人気があるの、わかるな。ずっと一緒にいたくなる」
「………………あぁ。可愛いな」
え?
ほぼ独り言の呟きだったのに。
まさか猫嫌いのディオンからそんな返しが来るとは思ってもみなかった。
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