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驚いて顔を上げれば、ディオンはなぜかボクを見ていた。
優しい表情。彼にもこんな甘く優しい顔ができるなんてびっくりだ。
翠の瞳を和ませて、ディオンは真っ直ぐにボクを見ている。
「……ディオン?」
思わず声をかけると、ふと我に返ったように直立し、また頬を染めて視線を逸らしてしまう。
そんな……別にいいのに。
あれでしょ? 触るのは苦手だけど遠くから見てる分には、っていう。
「本当は、好きなんだね…………?」
隠れ猫好きか。
ま、このイカツい青年将校が猫相手にデレてたらイメージ狂うし、仕方ないよね。
「っ! あ、ぁ…………そうだな……っ。
好きだ……っ!!」
だからそんな必死に焦点をずらさなくても。そしてそんな力いっぱい言わなくとも。
猫を見たいのに見れないらしいディオンは、視線の先をズラし、やけに真剣にボクの顔を凝視している。
ふふ、ふふふふ……。
いつも四角四面に真面目な従兄が挙動不審に陥っている様子に、ボクは思わず破顔した。
「っ!!」
真っ赤になっちゃって。
ホント、ディオンにもこんな可愛い面があったんだね……。
なんか、親近感、湧いちゃうな。
「ボクも好きだよ。一緒だね」
「はぅっ!!」
…………?
今、なんか変な音がしたような?
まさか、ね。
まさか…………
「ディオン? 大丈夫!?」
突然、左胸をかきむしってうずくまる姿に、ボクは仰天して駆け寄った。
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