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「撫でて欲しいの……? そうか……。ごめん、ちょっと待っててね?」
指先を舐め続けるケットシーに声をかけ、ボクは再びディオンと向き合った。
こうしてみると、線の細い美少年に馬乗りになる偉丈夫……って、なかなかに扇情的なような……。
……でもま、欲は欲でも食欲だもんね?
はぁ。やっぱり、モンスターにとっては「美人=生け贄」なのかな。自分達だって大概美男美女のくせにさ。
「ごめんね。……ディオン、続きをしようか」
その瞬間の彼の顔をなんと形容すればいいのか、ボクにはわからなかった。
だって、あんなに複雑な表情、見たことない。たぶん、ボクにはできない表情だ。
「………………ディオン?」
陰影の濃い、男らしく整った顔が歪んでいる。
「…………すまない……」
ようやく呟かれた声は小さくて歯切れが悪く、やっぱりディオンらしくない。
ボクは叢に横たわったまま、小首を傾げて彼を仰ぎ見た。
ちょうどボクの太もものあたりに、ディオンのぬくもりを感じる。体を起こし跨がる彼は、重いはずなのに……うまく体重を逃がしてくれているのだろう。今はもう、ほど良い圧迫感がある程度だ。
ケットシーの子猫は、相変わらずボクの手にまとわりついている。
にゃんこ、かわゆす。
こんな状況なのに和んじゃうよ……困ったな。
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