3 成長したのでBL解禁ですっ!

14/25
前へ
/189ページ
次へ
「…………すまない……どうかしていた……」  ふいに顔を伏せたディオンが、低く、謝罪の言葉を絞り出した。  と、同時に、ぬくもりと圧迫感が消え去る。  彼は身体能力を活かし、一瞬で、離れた木陰まで飛び退いたようだった。  ………………いいの、かな?  もしかして……ディオン、原始的な本能に勝ったの? 理性で欲望を征した……?  それって、相当にすごいことだよ?  だってボク達は人間じゃない。道徳観念なんて持たない、モンスターだ。  格上の相手に粛清されずに済む程度の自制心と、虎視眈々と下剋上を狙う野心に溢れた人外(モンスター)だ。  人間の記憶を持つボクとは、みんな根本が違う。  レグルス侯爵家に忠誠を誓い、侯爵を頂点と戴くものの、その令息を廃する機会を逃すはずがない。  ボクが死ねば、ディオンが爵位に近づく可能性が僅かばかり上がるのだから。  食欲だけでなく、すべての本能が、ボクを吸い殺せと命じていたはずだ。なのに……。 「オレは……おまえを守ると誓った」 「あ…………」 「怪我はないか……?」 「……大丈夫」  そうか。  ディオンの理性を繋ぎ止めたものは、矜持と恐怖なんだ……。  彼が、侯爵の前で誓いを立てたこと。 ボクだって聞かされていた。  美しい息子を溺愛する父親が、珍しく、ディオンを私室に招き、護衛役に任命したと。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

427人が本棚に入れています
本棚に追加