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親族といえど、当主と言葉を交わせる者は限られている。いくら将軍の子息とはいえ、成人前のディオンが侯爵の私室に招かれるなど、異例のことだ。
一族のトップたる侯爵との誓い。
そして、異例の扱いを受けるに足りる自分への自負。
それが彼を支えている。
「………………その……ケットシーだが……学園側に管理登録の確認をしてくる。飼い主が判明するまで、預かっていてくれないか?」
ボクと目を合わせようとしないディオン。
……仕方ないか。
「いいよ。じゃあ、先に戻ってるから」
「あぁ。スビトにもそう伝えておいてくれ」
「……ディオン、案内してくれてありがとう」
「…………あぁ」
素早く踵を返して立ち去ろうとしたところに声をかければ、やはり振り向かないで硬質な頷きを残した。
悔しかったんだろうな……。あのディオンが、一瞬とはいえ、本能に負けたんだもん。
悔しいよね……。
「おいで。ボクの部屋に行こう?」
みゃーーーーん
小さな声で鳴いて飛び込んできた小さなぬくもり。それを腕に感じながら、ボクは裏口から生活棟に入った。
モンスターだって……ぬくもりは欲しいんだよ……。
王立学園は、簡単に言えば全寮制の小中高一貫校だ。
たった3年で、基礎的な礼儀作法から支配階級として必要な知識まで、みっちりと詰め込まれる。
全寮制なのは、悪いモノが中に入り込まないように。それは、低級の魔物だったり、国家転覆を企む勇者だったりする。
そう、この世界のどこか遠くには、人間も住んでいるらしい。会ったことないし、別に興味もないけど。
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