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ボクは長い廊下を渡り、生活棟の中心、円筒形のホールに辿り着いた。
コツコツと足音を響かせる歩き方もできるけど、普段は魔力を使って滑るように歩いている。
「しっかりと掴まっているんだよ?」
腕の中で心地良さそうにウトウトしていた子猫に声をかけ、ボクはホールの中心を一気に上昇する。
ここは、いわばエレベーターホールのような場所だ。生活棟で階や棟を移動するにはここを通るしかない。
動力は自身の魔力。宙を飛ぶか、壁を走るか。
だから、装飾も最低限。破壊されてはたまらないのだろう。
中世ヨーロッパの教会のように華やかな壁画やら彫刻やらが置かれるこの生活棟で、唯一、シンプルな場所がこのホールだった。
生活棟は、一階にエントランスと警護室や救護室があって、二階以上が生徒の居住スペースになっている。
東西南北各棟に別れているため、俯瞰すると十字の形だ。
ヴァンパイアが教会装飾を施した十字の建物に住んでいいのか??? という疑問はあるけど……まぁ、実害は何もないから、気にしないことにしておこう。
元の世界の常識なんてあてはまらないし。苦手は……克服するべき、だもんね?
魔力を使って悠々と飛翔しながら、ボクは7階建ての建物の上から二番目、南棟の踊場に降り立った。
居住区は、最上階を王家と親王家が使っている。
残念ながら今現在は主人不在で閉鎖中だ。
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