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しかし、あの父を「若」、とんでもない母を「嬢」と呼ぶあたり、スビトさん、精神的にはおじいちゃんなのかもしれない。
そもそも、あの母の固執を「子煩悩」と評するあたりが…………それに、ボクに食指を一切動かさないし……?
「ところで坊ちゃま、本日のお勉強はいかがでございましたか?」
メイドさんの運んできたお茶とお茶菓子をボクの前に並べながら、スビトさんは優しく笑う。
「どうということはないよ。相変わらずだね」
「まぁ、仕方のないことかもしれませんな。シシー坊ちゃまに見つめられれば、教師とて動揺せずにはおれません。この世はすべて、坊ちゃまの虜でございますれば」
「……嬉しくないんだけど」
「まぁまぁ、そうおっしゃらず。世の劣情を手玉に取れば、坊ちゃまに不可能はございません。レグルス侯爵家の天下ですな」
……劣情って。
思わず、飲んでいた紅茶を吹きそうになった。
まぁ、「抑えきれない浅ましい本能」って意味で考えれば、そう言えなくもない、か……?
確かに、「絶世の美少年=食べたい」とか、浅ましいわ卑しいわで、ひとかけらも高尚な部分がない。
「まぁ……ボクの身がもてばね」
食べられちゃったら意味ないし。
ギリギリの駆け引きとか、ボク、苦手なんだよなぁ……。
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