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ちなみに血鏡とは、この世界独特の通信器具だ。
器具とは言っても、用意するのは水盆のみ。透明度の高い澄んだ水に牙で噛んだ指先を浸して血液を混ぜ込めば、そこにあっさりとテレビ電話の画面が完成する。
血を媒体に魔力を発動させるだけだから、昔から、知性のあるモンスターの間では連絡手段として重宝されてきたらしい。
……なのにこのシステムの何が嫌って……ボクの白魚の指先に一々穴開けるの、ホント、真剣に嫌なんだよね。
ヴァンパイアの治癒力、素晴らしいけどさ? そういう問題じゃないと思うんだよ。
あのバカ親二人……毎日毎日何回も通信させて!
指の一本だってボクのものなら貴重な芸術作品なんだって、いい加減理解してよね!?
まったく……透けるように白い肌と流れる真紅って……耽美なのは素晴らしいけどさ……安売りしてイイもんじゃないんだよ、間違いなくっ。
はぁ。
「おいで?」
大きな寝台に腰掛け、声をかければ「みやー」と愛らしく駆けてくるボクの癒やし。
みんなこのくらい素直で可愛ければいいのに。
「お利口さんだね。キミさえ良ければずっとボクと一緒にいて欲しいけど…………本当に喋れるのかな……。ふふ、こら、くすぐったいよ」
抱き上げて膝に乗せれば、ボクの手をペロペロ舐める。猫特有のザラザラとした舌の感覚と、柔らかな毛並みの触れる感覚。
ボクはふわりと子猫を抱き上げ、枕の横のクッションに降ろした。
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