427人が本棚に入れています
本棚に追加
「そろそろ眠たいでしょ? いいよ、お休み。
…………何? あぁ……大丈夫、ここにいるから」
確かに言葉を理解しているのかもしれない。
ふかふかのクッションにコロリと横になった子猫は「くわぁっ」と大きなあくびを漏らした。それから、切なげに鳴いて……背中をゆっくりと撫でてやると、心地良さそうにまぶたを閉じた。
まだほんの小さなケットシーだ。まだ親と一緒にいてもおかしくないくらい幼く見える。
この仔はよく頑張った。一人で、見知らぬ場所で。
優しく背中を撫でながら、徐々にリズミカルに深くなっていく寝息を感じる。
ボクはヴァンパイアだから。この薄暮の世界、カーテンの閉ざされた暗い部屋の中でも夜目が効く。
手のひらに感じるぬくもりだけではなくて。穏やかに眠る子猫のあどけなさに、口元が自然、ほころんだ。
無条件に湧き上がる愛しさに胸があたたまるのは、いつ以来だろう。
小さな命を、この手で守りたいと思ったのは……。
ウトウトと、子猫と一緒にまどろむ。
なんとも表現しがたい幸せ。
ふわぁぁ。
ボクは、この世界に来てから初めて、満たされた想いで眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!