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いろんな思いがけないところにおねえさまたちのベッドがあるので、あたしは夜が来るたびに驚いてしまう。
その時の気分で変えてしまうものだから、尽きることがないのだ。
「妹ができるたびにこれをやるの」
眼鏡をはずしたおねえさまは困り顔だ。
「だってほら、ここにいると、驚くことってそんなにないでしょう」
「おねえさまだってしてたじゃない。わたくしが妹になった頃、ね」
廃墟の奥から、木の上から、あるいは割れた鏡の中から、永遠処女たちは歌うように言う。天蓋のレースを指先でよけて、次々に手をつないでいく。居場所が変わらないのはおかあさまくらいだ。数が増えるごと心が浮き立って、あたしたちは夜を楽しむ。
あたしたちのおかあさまは愛らしい。
小さな体にいつまでも朽ちないフリルのネグリジェ。
あたしたちは机や床や壁や天井に寝転がり、折り紙をしながら、たまにおかあさまの椅子を揺らした。おねえさまたちに教えられて、たまに上手ねってほめてもらって、あたしは赤い唇ではにかむ。
銀色の折り紙風船はどんどんかごにたまっていって、いっぱいになるとまた別のかごと交換されるのだった。
これを糸で吊り下げて、おかあさまのためだけの、天球を地下につくるんだって。
「もうずうっとやっているのに、まだまだ数が足りないの」
「足りることなんてあるかしら」
「ないかもしれない」
「あるかもしれない」
「わからないの」
くすくすと響く笑い声が、時々おかあさまのまぶたを持ち上げる。
あたしは今日もベッドの場所を考えながら、待っている。
新しい妹に、折り紙を教えてあげる日を。
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