1人が本棚に入れています
本棚に追加
あなたがいいなと転校生は言った。
「え、なあに」
昼休み、誰もいない理科室。購買のパンのいちごジャムが唇のはしっこでべたついている。
「新しい妹を探しているの。それがあなたならいいなって思うのだけれど」
分厚い眼鏡に隠された、大きなかわいい瞳。
あたしは動けなくなってしまう。
「連れてってくれるの」
「そうよ」
「どこへ」
「どこかへ」
教室じゃ見せられない類の笑顔を浮かべてみせる。
「ここじゃないなら、あたしは平気」
決まりね、と転校生が微笑む。
ほほえむ。
そうだ。あたしはずっと、どうしてみんな気がつかないんだろうと思っていた。
普通の中学生? このこが? まさか。
あたしたちは手をつないだ。
退屈な五限目、食べかけのジャムパン、ひとりっこのあたし。
全部まとめてサヨウナラ。
あたしたちは深夜までひとっとび。
最初のコメントを投稿しよう!