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ねじれた大木、壁も崩れた廃屋の群れ。狭い花壇から自由を求め、草花がそこかしこに逃げ出して、森はすべてを受け入れる。忘れられたその村には、柔らかなベッドが溢れていた。天蓋の意匠は様々なのに、そこから起き出す影はみんな真っ白。
分厚い眼鏡、おさげに制服、化粧も全部拭い去って、永遠処女たちは星のようだ。
目が覚めるとたくさんのおねえさまがあたしを覗き込んでいたので、恥ずかしくなって微笑む。
ルージュもないのに真っ赤な唇で、永遠処女たちは祝福をくれる。
「妹ね」
「あたらしい妹」
「おかあさまも喜ぶわ」
あたしは真っ白なネグリジェを素肌に被った。
灰かぶりはもうやめる。黄金の月で心まで洗う。
そしてあたしたちは手をつなぎ、はしゃぎながら古い石の階段を下りた。
おかあさま。おかあさま。新しい妹を連れてきたの。
安楽椅子のまわり、さんざめく唇の隙間に牙が光る。
あたしは促されておずおずと、おかあさまの前に首筋を差し出す。
あなたのたった一度のくちづけで、あたしは夜の生き物になる。
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