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「なんだか様子がおかしいぞ。待ってくれ。この電話の声、受話器そのものが喋っているのか。ということは亡くなったっていうのは。」と僕は驚く。
「そうさ、私は受話器。ほら、ここを見てくれよ。ダイヤル部分、すっかり壊れて使えなくなっているだろ。キミは私の大切な相棒であるダイヤルを殺してしまったんだよ。衝動的な行動とはいえ、到底許されるものじゃない。どうやら見たところ、キミはこの部屋に閉じ込められてしまったみたいだね。ついさっき目を覚ましたキミは私の誘いのベルを聴いて気が狂い、そうしてダイヤルを叩いて壊した」と受話器はニヤついている。
「やっと思い出してきたぞ。変な男たちに変な臭いを嗅がされて意識を失ったのだ。そして気がついたらこの部屋の天井が目に入った。扉にはもちろん鍵がかけられていて、電話はこの通り使い物にならない。僕はいったいどうしたらいい」と僕は嘆いた。
「何をいってるんだい?私たちはこれからずっとずっと一緒なんだろう?」
受話器の、
奇妙な笑い声が
湿り気のある壁に反響した。
ベルのようなその音色は
僕に、外界との永遠の別れを予感させた。
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