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異世界 北蔵(いせかい きたぞう)、18歳の冬季
異世界に来て己の限界を悟った彼が行き着いた先、それは感謝であった。
自分を異世界に転生させ、第2の人生を歩む機会と強くなるきっかけをくれた神に対する返しきれない程の恩。
少しでも返そうと思い立ち、そして決めた。
1日1万回、感謝の正拳突き。
「…感謝」
気を整え、拝み、構え、突く。
始めた時は一つの動作が完了するまでに7~8秒かかり突き終える頃には陽も落ちていた。
突き終えると死んだかのように眠りにつき、日の出と共に起きて再び突くを繰り返す日々。
7年が過ぎた頃、異変に気付く。
1万回突き終えたのに陽が落ちてない。
北蔵、30歳で完全に羽化する。
そして5年後、感謝の正拳突き…1時間を切る。
代わりに祈る時間が増えた。
山を降りた頃、北蔵の拳は
音を置き去りにした!
北蔵、34歳の話である。
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