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「何故そう思うんだ?」
逸香は手を伸ばしてサイドテーブルに置いたスマートフォンを取って操作し、遠野に手渡した
遠野が目にした画面には、巨体を揺らす男が下敷きにした少年の細い腰に股間を押し付けて捏ね回し、悲壮な声にすら発情して喘ぐ様が映し出される
「、、、これは?
まさか、、、美月君とあの時のパテル?!」
「これを曝したところで彼の利益になるとは思ってない。
同情して助けたい訳でもない。だけど」
耐えられない、というようにシーツに顔を押し付けて
「自分が二人いるみたいだ、苦しくて仕方がない」
ベッドに顔を埋め、肩を震わせて泣く逸香を見、この上なく湧き上がる愛情を感じた遠野は身体を起こしてその肩を腕の中に引き寄せた
「苦しめばいい。
自分を知って楽になるまで僕が見ててあげるよ」
「涼、、、」
「言ったろう? 側にいるって」
逸香は助けを求めるようでいながら首を振った
「どうかしてる、、、涼も」
「そうだ、僕もどうかしてる。
だが、僕には本当の逸香がよくわかっている。
限られた世界に閉じ込められていた君は初めて生身の人の心に触れ、驚いているだけだ」
「やめろ、そんな言い方」
「ようやく気付いたんだよ。
自前の正義に苦しむ自分に。
斬り落としたゴリアテの首を掴んでるダヴィデと変わらない」
「やめろったら」
遠野は不機嫌になる逸香が可愛いくも可笑しくなって微笑んだ
「やめない。
僕だって同じだ。逸香を知るまで聖人の裏にいるもう一人の自分を見ようとはしなかった。
気付いた時は苦しかったよ」
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