Collapse ー崩壊ー

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午後の授業を終えた所で逸香の退学を告げられた遠野はコリドールを走り、レッスン棟へと向かった 「倉木先生! 逸香が、、、 逸香が退学処分とはどういうことですか?」 異様な気迫でやって来た遠野の(かす)れた声を受け、事務室の空気が一瞬止まったものの、 「遠野先生、こちらへ、、、」 倉木の落ち着いた対応に再びバタバタと忙しない動きが戻る 力無く応接室へと遠野を促した倉木は、午前中に理事長室で()された会話の全てを打ち明けた 「『好きにしろ』って、、、 逸香は理事長の孫ではないですかっ」 遠野は信じられないという風に首を振り、倉木もまた同意に頷き、髪をかきあげながら深いため息をついた 「それで、、、逸香は? 今どこにいるんですか? 逸香は」 「理事長室を出てからは、、、フロアには戻ってません」 逸香が自ら国際舞台への道を絶ち、認可取消という事態を招いたことに両手で顔を覆った 「逸香は、、、今後彼のバレエはどうなるんですか?」 「聖ルシアンを退学後、理事長は元のオーストリア校にも戻す気はないようです。 ご両親が逸香を引き取るにしても理事長の手前、他校への転校手続きくらいしか、、、」 「倉木先生! あなたは僕に逸香が何を意図してようとも結果を見るまで見守ってくれと言ったではないですかっ」 「、、、ですが遠野先生、今回逸香がしでかした事はあまりにも無謀でした、、、」 何かを溜めきった倉木は次の遠野の言葉に、 「彼の才能はルーンヌィきっての、、、 いえ、世界にまで躍進したほどでしょうっ?  それをっ、、、」 ばんっ と目の前のテーブルを叩き、充血に伏せられていた目を開いた 「逸香はこのルーンヌィを崩壊させたのです! 認可取消の理由はバレエ協会にも報告されました。 今後どの団体も逸香を受け入れることはしないでしょう。 逸香は確かに世界的にも通用する才能の持ち主でした。 ですが、その本人が自らの将来を絶ったのです! 、、、僕らにできることは、、、。 できることは、、、もうないではありませんか」
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