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戸惑う秀伍に構わず、
「僕はあなたの紅羽に対する気持ちを知ってましたし、有鉗先生の事故後、紅羽のパテルを申し出て断られたのも知ってます」
くすくすと周囲からの笑い声が上がるのも構わず、
決して小さくはない声ではっきりと言う逸香に、秀伍が、
「それは、、、そうなんだけど、、、いや、僕は少しでも役に立てたらとも思って」
少し気まずそうに答えたのを捉え、
「でしたら、この子を引き取って下さい」
と横にいた美月を秀伍の前に押し出して言った
「ええっ、、、!」
秀伍と美月は同時に声をあげ、周囲は好奇心に耳を澄ます
「近日中にもルーンヌィは扶養進学制度の認可を取り消されます。
ですがルーンヌィ二番手のポワントで才能あるこの子には安定した行き場がありません。
後見人を付ければどこに行っても扶養は継続できますから、認可が取消される前に契約して下さい。
紅羽を引き取るつもりだったのなら、可能でしょう?」
事態を呑み込もうとする秀伍は、逸香のはきはきした物言いに頷きながらも、目を丸くした
「いや、しかし急にそんな、、、」
「そ、そうだよ、い、逸香君、迷惑だよ、、、
いきなりこんなこと、、、」
くるりと向きを変えて逸香の背後に隠れようとする美月を掴まえ、逸香はジャージを脱がせた
「な、何をするの」
「彼、髪も黒いし少し太らせれば紅羽に似てると思います。
でも紅羽にはないダンサーに必要な厚かましさと人を押し退けて憚らない闘争心と向上心はあります。
技術に関しては基礎が不完全なので全てのポジションに影響して今以上伸びないだけなんです。
僕ともパ・ド・ドゥを組んでレッスンしてましたが飲み込みは早いです。
紅羽に似てるともポワントとも言いましたけど愛人がわりのクリエンテラでも、ゲイでもありませんから手は出さないで下さい」
一気に捲し立てる逸香と、上半身T シャツ一枚にされて唖然と立ち尽くす美月
二人を交互に見ていた秀伍は、逸香の言葉が切られた所で周囲と共に笑い出した
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