Ironical 逸香 ーグイド・レーニー

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「これだけ?」 新居に運び込まれた荷物を見渡した逸香は、呆れ気味に訊いた 「そうだな、、、美術関係の書籍がほとんどだ。 僕は元々私物が少ない」 遠野は新しい部屋を歩き回る逸香を掴まえて軽く唇を重ねたが、それでも足らずに締まった腰を引き寄せ、有無を言わせずキスを重ねた 「やめろ、、、涼」 眉間に溝を作り、押し返す逸香に遠野は切なく笑い、 「本当に行ってしまうのか?」 と両手で水を掬うようにして、前髪が斜めにかかる華奢な顔を包んだ 逸香は遠野から顔を背け、天井を眺めながら、 「それは涼も同じだろ? 聖ルシアンをあっさり辞めてこんな所に、、、」 不機嫌とも思える表情で言った 遠野は逸香を解放し、窓辺まで足を進めて大きな窓を開け、一階から望む木々の香りを中に入れた 「木立に囲まれた館、数々の美術品、それらを管理し来訪者を案内する。 、、、ずいぶん前から誘われてたんだよ、このイスファール美術館に館長として来ないかって。 こうして館内に部屋も用意してくれたし、これからは数多くの絵画に囲まれてもいられる。 僕にはぴったりだと思わないか?」 遠野はある願いをもって逸香を見つめ、 「美術館のオーナーは隣の棟にあるイスファバレエという男性ばかりのバレエ団に出資してるそうだよ、、、逸香は興味ないかな?」 光を背にし、何気なくあたりをつけてみたが逸香は 「ないね」 何の反応も示さない その表情はとって付けたものでもないのがわかり、遠野はその先を口にするのを諦め、穏やかに微笑んだ 「そうか、、、」
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