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波打つお互いの胸
流れる前髪から瞳を隠さず遠野を見上げる逸香
繋いだ逸香の指に口づけを移し、暫く見つめ合ってから、言い出しかねていた言葉を口にした
「、、、倉木先生はルーンヌィを去る前に、逸香を頼むと僕に託してくれたんだ。
美術館のオーナーには後見人になってもらうべく承諾も得ている」
逸香は遠野の思惑を探るように瞳の奥に視線を止め、首を傾げた
「何だかプロポーズみたいだな」
真顔を恥ずかしさで紅潮させ、あらぬ方を見た後で覚悟を決め、再び逸香に向き合った
「つまり、、、
逸香とのパテル契約書を、認可取消前に遡って作ってもらったんだが、、、」
遠野の言葉を受け、僅かながら驚きを見せた逸香に、
聖人を捨てた元美術教師は最大の勇気と愛を以て微笑んだ
「そこに逸香のサインをくれないか?」
─ 了 ─
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