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「姫様とは他人じゃないんだ。任せてくれ」
兄のそのセリフは、既に彼らに身分を明かしていることを示していた。
兄の考えがよくわからなかった。
私には、母の母国を助けたいなどという動機で兄が動いているとは思えず、真意は別にあるのだろうと考えてしまった。
「わかったわ、出発しましょ」
シルフィが兄の手を取った。
「……街で待っていろと言ったはずだが?」
「やだ、私も付いてく! この先の街だって、いつ戦火が及ぶかわかんないし、ヴィレントが守ってくれなきゃ、安心できない!」
シルフィが兄に腕を絡めながら、唇を尖らせた。
この人のこういうところが、私は嫌だった。
兄の方も、それを怒鳴るでも振りほどくでもなく、ただ迷惑そうにため息をつくだけだった。
私が口答えした時は、殴り飛ばしてたくせに……
私は2人から目をそらした。
「ヴィレント殿、時間が惜しい。すぐにでも出発したいのだが」
ヴェイズが急かした。
兄は軽く舌打ちすると、シルフィに向かって、
「わかった、好きにしろ。危なくなっても知らないからな」
「平気よ。ヴィレントが守ってくれるでしょ?」
兄は再度大きなため息をつくと、諦めて歩き出した。
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