運命の分かれ目

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 兄はそれをまとめ上げ、ベスフル城に攻め上った。  砦の指揮官の中には、兄に不満を上げるものも少なくなかったが、そこで兄は自身の身分、国王の甥であることを持ち出し、フェアルス姫の臣下となってベスフル城を奪還することを宣言したのだった。  そして自ら先頭に立って戦い、敵に劣る戦力でベスフル城奪還を果たすことで、反対勢力を黙らせてしまったのである。  奇跡だと、ベスフルの人々は言った。  その時より、英雄ヴィレント、と兄は呼ばれるようになった。  入城した私達は、英雄の身内ということで、1人1人に城内の個室を与えられた。  それは、これまで私が体験したことのないような待遇だった。  豪華な食事に、ふかふかのベッド、服もこれまでのボロボロだった物から、新品のドレスに変わった。  これでも王族が身に着けるには、質素なものだと、侍女さんが教えてくれた。  王族である。  国王の血縁である私は王族として、スキルドやシルフィより一段上の扱いを受けているようだ。  何もしなくても、侍女さんが私の髪を整え、ドレスを着つけてくれる。  まるで、夢でも見ているようだった。  部屋にある大きな鏡を覗くと、綺麗なドレスを着た見慣れない少女がそこに映っていた。     
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