プロローグ

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プロローグ

 今は、ベスフル王国歴199年。  もっとも、あの王国から遠く離れたこの地では、王国歴など意味はないのかもしれないけれど、私は他に時を測る物差しを知らないため、こう記しておこうと思う。  ベスフルは私の母の故郷であり、私自身も何度か訪れたことのある場所である。  でも、私がこの先、生きている間にあの場所に戻ることは、もうないだろう。  私の名は、チェント・クローティス。  かつて、私の身勝手で多くの人を振り回し、多くの人が死んだ。  そして、私は生きるために、私を知る人のいないこの地に逃げるように移り住んだ。  許されることではないとわかっている。どこまでも身勝手で卑怯な、私はそんな人間だ。  だから、せめて私が私自身の罪を忘れることのないよう、ここに刻んでおこうと思う。  これから、ここに記すのは昔話。  これは私、チェント・クローティスの罪の記録である。
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