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復讐の始まり
私の両親の話をしよう。
私の母は、ベスフル王国の王族だった。
そして、父は魔王の息子だった。
"魔王"と言っても、別に異界の悪魔というわけではない。
北方に住む、青い肌を持つ一族の王様のことである。
私が生まれるより前、ベスフルと魔王軍の戦争の時、父は魔王軍を指揮する将軍の1人だったそうだ。
その時の戦争は、父の寝返りによって魔王軍が大きな損害を被り、撤退していったという。
父の寝返りがなければ、ベスフルは敗北していたと言われている。
母は、ベスフル軍に帰属した父と惹かれ合ったのだという。
しかし、父の功績をもってしても、2人の婚姻をベスフルの王族たちは認めなかったそうだ。
母はそれに反発し、王宮を出て暮らすことを選んだのだという。
そして数年後、2人は魔王軍の報復に遭い、殺されてしまったのだ。
その時、私と兄は襲撃をいち早く察知した両親に先に逃がされ、何とか生き延びた。
もし、ベスフルの王族が2人を受け入れ、王宮に守られていれば、2人は死なずに済んだかもしれない。
両親が殺された時、私の心にあったのは、深い悲しみと魔王軍への恐怖だった。
だが、兄は違っていたようだ。
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