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スキルドとシルフィ
スキルド・ディバード。
彼は私が知る限り、一番優しい人だったと思う。
そんな彼を、私は裏切り、沢山傷つけた。
とても、許してくれと言える義理ではない。
でもそんな私さえも、彼なら許してしまいそうな、そんな人だ。
スキルドとの出会いは、私が14歳、彼が16歳の頃だった。
あの時私は、2ヶ月以上も帰ってこない兄を待っていた。
兄は出かける前から、元々長く戻らないつもりだったのか、私は食料をいつもより多めに渡されていたのだが、流石にそれも尽き、水だけを飲む日々が続いていた。
兄からは部屋からは絶対出るなと言われ、大量の水袋を渡されていたが、それだけで2ヶ月も持つわけがない。私は町の井戸に水を汲みに、何度も外出した。
外出が兄にバレれば、また殴られるに違いない。だが干からびるよりはマシだと、自分に言い聞かせた。
18歳になったはずの兄の私への態度は、何も変化を見せていなかった。
私たち兄妹の関係は、5年前から時が止まっていたようだった。
そして、兄以外と全くかかわりを持ってこなかった私自身も、子供のまま時が止まっていた。
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