雨の日にやろうと決めていた。

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雨の日にやろうと決めていた。

家を出てからどれくらい経っただろう。雨はいよいよ激しさを増していて、左右にぶら下がるビニール袋は一層重く両腕を締め付けた。 ぬるついた手の中でスマートフォンが光っている。何か通知が来ているようだがロックがかかっていて、手の自由が利かない今は内容を確認することはできない。サイズの大きいレインコートのフードが度々ずり落ちて前を見ることもままならない状態だった。 上部がアーチ状に切り取られた狭い視界。その中に入ってきては出て行くもの。 タバコの吸い殻、水にふやけて散り散りになったレシート、この辺り一帯に茂っている大きな蔦の葉。蔦の葉は枯葉がほとんどで、繊維が硬くてデコボコした表面が暗がりの中雨に濡れて光る。 あのタバコは彼のものだったかもしれないな、とふと思った。彼は二人で歩いているときでもよく歩きタバコをしていたからだ。     
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