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チッチビービービー
小雀(コガラ)はその名のとおりとても小さい身体なのに鳴き声は随分大きく響く。灰色の羽と小さな頭に黒い帽子をかぶったように見えるのが見分けるコツだ。
四十雀も黒い帽子をかぶっているが、灰色に見える羽は光を捉えると綺麗な黄緑色に輝く。そして胸に一筋の黒い模様がありネクタイをしているように見える。
五十雀は流線型の体型で灰色の羽、頭部も灰色で帽子はなし。黒い筋が黒いくちばしから目を越えて羽の手前まで伸びている。スリムなサングラスをかけているようで少し不良っぽい。
窓の外を眺めながら、黒田はヒマワリの種をやっていないことを思い出した。鳥籠の中に何も入っていないと、鳥たちは黒田が座るところに一番近い窓にやってきて窓の枠にとまってガラスをつつきだす。
コツコツコツ、強請っているのか、ただそうしたいのか、その判断ができないまま野鳥たちの行動を見ると黒田は鳥籠にヒマワリの種を入れてしまう。一日にやる量をきめれば3kgという、一人暮らしの男か一ヶ月に消費する米並みのひヒマワリの種が消えるはずがないのは百も承知だ。
黒田はそれでいいと考えている。自分の素性を知らず、知りたいと望むこともないだろう野鳥に懐かれるのも悪くはない。
野鳥たちにとっては餌の自動補給機としか見えていなくてもだ。秋から冬、そして春がくるまでの厳しい季節をヒマワリの種によって命を繋ぐ野鳥が1羽でも増えれば、それでいい。
か細い僅か2年にみたない寿命には儚さを感じることができるというのに……黒田はそこまで考えて可笑しくなった。自らの手によって命を断ち切ることになった人間に対して罪の意識がないというのに、野鳥の面倒をみて心配している。
チッチビービービー
チッチビービー
コツコツコツ、コツコツコツ
「しょうがないな、今いれてやるよ」
黒田は野鳥の命を長らえるために立ち上がった。
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