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妹の夢子はいつも要領がよかった、親も学校も友達もバイト先の先輩もいつも優しくて無邪気に笑って天使のような妹だと、姉ながら思っていた。でもいつも手に入れたいもの、欲しいものは全てと言っていいほど夢子に取られてしまった、いや、取られて当然だった。だって明るくてかわいい夢子にみんなが惹かれるのわかってたから。 自分の彼氏とも、自分の男友達とも、憧れてた先輩にも、夢子は手を出していた、たまたまだろうと思い込んでた、そう思い込んでいないと今にもどこか壊れてしまいそうだったから。でもいつも心の奥深いところが小骨が引っ掛かるような気持ちだった 頭の糸が切れる音がしたのはとても簡単だった。 手を染めるのは簡単だった、だってもう実際に手が動いていたから、なにもかも奪われてばかりの可哀想な自分とは縁を切りたかった。もう、うんざりだった。 横にいる健の青ざめた顔は目に入ってこなかった。 夢子の綺麗だねと言って撫でていた足を揺さぶりながら触る健の手は震えているのか、怯えて痙攣しているのかわからなかったそんなこと考える余裕がなかった、考えるよりも先に手が出ていた。 夢子の歪んだ顔を見ながら絞める手が止まらなかったもう止めることが出来なかった。 のどぼとけから首の骨がぽこぽことなる音が面白いように聞こえた。 その音がまるでBGMのようだった、面白いように聞こえるからすごく力が入って笑い声が出ていたのに気が付かなかった。でも、ここ最近生きてきた中で一番幸福を得た瞬間だった、苦しそうに私の腕をひっかかく夢子の細くて白くて透明感のある手がどんどん青白くなっていくのが面白かった。自分の無表情の顔が満面の笑みに変わっていたのがわかった。 最後の声を振り絞るように夢子は涙を流しながら「おねぇ...ちゃん...」と耳に入ってきた。 可哀想な妹、私のものを取らなかったら、私の妹で生まれてこなかったら、こんなお姉ちゃんじゃなかったらこんな羽目にはならなかったのにね。 でも、本音を言ったら微塵もこんなこと思わなかった。思った事といえば、あー人ってこんなに躊躇なく無感情で呆気なく殺せるんだって事だった。
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