サヨナラを決めたのは、私

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拝啓 青空 シュン様 私、島崎ミエコは今日限りで、あなたとしばらくの間、お別れすることを決意しました。 そうしなくて済む方法もあったのかもしれない。 けれど、それが一番良い答えなのです。 もちろん、あなたは何も悪くない。 全ては、私の未熟さが招いた結果です。 未練がないと言えば嘘になります。大嘘です。 だってほら、目を閉じれば楽しかった日々が、つい昨日のことのように色鮮やかに思い出されるのです。 あなたを初めて見かけたのは、多分、8年前。 多分というのは、最初はあなたに全く興味がなかったからです。あなた、というより、テレビの向こうのアイドルという存在自体に無関心でした。 なのできっと、あなたがSUMMER LANDという9人グループでデビューした8年前に、テレビの芸能ニュースか何かを見て、認識はしていたと思います。 あなたを「グループの中の1人」ではなく、「青空シュン」として意識したのは、それから2年経った時でした。 私の大好きな小説「探偵オドロイタ」シリーズの連続ドラマ化が決まり、その主演があなただと発表されたのです。 正直、最悪だと思いました。 「探偵オドロイタ」シリーズは、有名作家ジョージ祭田先生の代表作です。 主人公は、一癖も二癖もある変わり者探偵。 全て見抜いた上で、犯人の言い逃れや嘘に「へえ、それは驚いた!」とわざとらしく驚いてみせるのが見所の一つ。 犯人にとってはすごく嫌な奴だけど、読者にはそれが痛快なのです。 そんな探偵役を、失礼ながらいつもニコニコ笑顔の爽やかアイドルなんかに演じられる訳がないと思いました。 けれど第1話のクライマックス、あなたの「へえ、それは驚いた!」を聞いた瞬間、私は探偵オドロイタがいる! と思ったのです。 それから私は、あなたのファンになりました。
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