禍の花

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 ランタンの火の光とは違う、どこか冷たさを帯びた静かな光。時折明滅するその光はどこか弱弱しく、今にも消えてしまいそうだ。 「なんだ……?」  火の光のようには見えない。それはまるでマヤカシの類。  まるでその光に魅せられたかのように――ククロウは警戒をすることさえ忘れ、その光へと近づいた。 「なんだ、これ?」  それは一面が透明な水のようなもので満たされていた。 「これは……水?」  思わず疑問が口をつく。ククロウにとって初めて目にしたソレは、普通の水のようには見えなかったからだ。 「凍っていない。それどころか――生き物すら、見当たらないなんて」  普通の水であれば、とっくに凍結している筈。  凍った湖だとしても、目を凝らして見れば魚影くらいは確かめられる。  けれどこの水は凍るどころか、魚や貝、藻草といった生き物が何一つ存在していなかった。  まるで、そこに在ることが当然であるかのように――水は揺蕩(たゆた)い、輝きに満ち溢れ、そして時折発光を繰り返していた。
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