夢の中の君に夢中

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しかし、そんな美しい女性の夢はなんの前触れもなく終わった。 いや、もしかしたらあの出会った日の夢こそが前触れだったのかもしれない。 僕がそんなことを考えながら、町をふらふらと歩いていると、ふと女性と初めて出会った場所に来ていた。 夢で出てきたあの場所が現実世界のこの場所であると言うことは、ずいぶん前から気づいていた。 家から三駅ほど電車に乗ったところにある、スクランブル交差点だ。 なぜこの場所なのかは分からなかった。 「すみません」 ふと声をかけられた。 僕はあの女性の面影を探して振り返った。 しかし、そこにいたのは髪を茶色に染め、化粧の濃い女性で夢の中の彼女とは似ても似つかない女性だった。 「何かありました?」 聞き返した。 何度考えても話しかけられた、理由が思い付かない。 「このあと、お茶でもどうですか?」 逆ナンだった。 単純にそれだけだった。 それでもこの広いスクランブル交差点のなかで、僕を選んでくれたことの喜びは大きかった。 きっと夢の中の彼女が幸運を招いてくれたのだ。 そう思った。
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