季節遅れの蝉

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 ああ、なるほど。それを言いにわざわざこんな田舎まで帰って来たのか。小学校の先生という昔の恩師の葬式に来たなんて理由をつけて。 「すまん。そういうことを言わせたかったわけじゃなかったんだ。だから……いい大人が泣くな」  しょうがないだろ。小学生のあの日、自分にやって来た異世界のヒーローみたいなもんだったんだ。それがそんな真っ当なさよならの理由を言われて、受け入れがたいって言ってもどうしようもない。  その異世界人が、目の前で大の大人がみっともなく泣き出しても傍に居てくれる優しい生き物だから、なお始末が悪い。  蝉の鳴き声はもう聞こえなかった。
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