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いっそ異世界人だと言われても納得するほど容姿端麗な男だった。
俺の頭の中に青春時代の思い出が駆け巡って動けなくなるくらいには思い入れのある人物だ。
「少し、話せるか?」
記憶より低い男の声が聞こえた。
敷地だけは広い寺の庭園を二人で歩く。庭園と言ってもせいぜい低い垣根が整えられているだけで、あとは伸ばし放題の草木と落ち葉ばかりで面白いものなんて何もない。
なのにたった一人見目麗しい人間がいるだけで薄い色ばかりの風景は一気にロマンス映画の世界になるのだから人の目の正しさなんてたかが知れている。
「お前、相変わらず女子に冷たい目で見られてたな」
「10年ぶりに会った最初の会話がそれか?それに、原因はお前だろ」
そうだっけか、ととぼける外国人面したこいつは幼少期をほとんど日本で育っているので変なアクセントは何も感じさせない。むしろ田舎からほとんど出たことのない俺の方が訛りがあるだろう。
「お前が転校してきたとき…」
どこにでもある思い出話、しかし俺にとっては衝撃だった小学校時代の話に花を咲かせることになった。
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