季節遅れの蝉

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 その後の俺の小学校時代がどうなったか想像に難くないが、正直に言うと暗黒時代だった。男友達が居なかったら引きこもりになっていたに違いない。 「酷かったなあれ…」  当時は見た目の儚さもあって中性的だったが、今は声変わりして完全に男性になった声で喉を震わせて笑う。 「あれのおかげでお前はクラスに馴染んだんだから俺にもっと感謝しろよ?」 「自業自得だろ」  クリスが鼻で笑う。確かに俺の失態というアシストが無くても、そのうちクリスはクラスに馴染めただろう。家が金持ちでもそれを鼻にかけることはなく、女子の喧嘩を仲裁できるほどに人の話をよく理解できる小学生だった。あの女子の愚痴を延々と聞く作業を俺は今でもできない。  なにより俺は言ったことは後悔したが、言った内容に後悔はない。  30も間近になれば外見は多少落ち着いて、あれほどキラキラしていた髪と肌の色も少しくすんでいた。  それでも思う。  世界でこの人以上に綺麗な人はいない。 「…お前は俺の顔以外に興味はないのか?」  そんなに視線が失礼だったのか、不満そうに口角を下げる。  申し訳ないが今も昔も一番に目に入るのは顔だ。いや人間誰だってそうだろうが、それにしたって胸に訴えかけてくるものが違う。  睨みつける青い目は濃く縁取られていて更に青を際立たせているし、鼻筋は高くスッと通っており女子が皆羨ましがっていた。金髪は波打つこともなく整えられている。ちょっと引いて見てみてもそれなりに身長があって、どちらかというと痩せているが肩幅はしっかりとしているし、スーツ姿も似合っている。 「ハリウッド行けよ。たぶん主演男優賞取れるよ」 「お前ほんと失礼だよな。大学からアメリカ行ってたけど、そんなに俺の外見を褒めるのお前だけだったぞ?」 「それは周りに見る目がない」  褒め過ぎてとうとう呆れられたらしく溜め息をつかれた。俺は大学時代映研に入ってたんだけど、撮影用のカメラが今あればなと思う。  携帯がなったらしく通勤用バックから取り出す仕草すら様になっていた。だが、取り出された携帯を見てぎょっとした。松ぼっくりかと思うくらいストラップがじゃらじゃらくっ付いている。目測10個くらいのストラップがぶら下がっているようだ。どう考えても邪魔だ。
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