季節遅れの蝉

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「なんだそのジャラジャラしたの」 「これは高知のご当地キャラ、これは仕事を選ばない猫の東北限定バージョン。こっちはあの浦安の」 「それで不審者を殴るとか?」  ブラックジャックとしていい武器になり得そうな気がする。それほど遠心力を持たせられる量だ。 「それなら防犯スプレーを使う」 「女子高生でも見たことない量ですが」  そう言われて初めて異常さに気づいたらしい。言い訳がましく目を逸らす。 「…出張先で土産物を見ると、つい…」 「まあ、そういうの好きだったもんな」  高校の頃の彼の姿が思い浮かぶ。確かに手持ちの文房具は女子が好きそうなキャラクターものが多かった。そのペン先にぶら下がっていたキャラクターと携帯ストラップの姿が重なる。  次の黒歴史が俺の頭の中に浮いてきた。俺を見つめるクリスもたぶん同じ事件の事を思い出しているだろう。
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