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二人になった世界
イブはまた怒っていた、
「もう飽きた、なんなのよ、いっつもいっつもお腹がすいたって言ったらこればっかり持ってきて」
指をもじもじさせながら
「これじゃないよ...おいしいだよ」
と自信なさげに言う。
するとさらに不機嫌な顔になって、
「もうこんなの食べないから」と言った。
でも、イブだってこの世界に
「おいしい」以外の食べ物がないことなんてわかってたから、
すごく悩んだ顔をして少し考えた後、
イブは何かをひらめいたみたいだった。
「ねぇアダム、あれ...じゃなかった、おいしいをどうやって作ったの?」
僕は、聞かれたことに素直に答えた。
「おいしいはねーお腹すいたーて思ったら生えた」
「そう、わかった」そういうと、
僕から二、三歩離れたイブが目をつぶって、
しばらく立っていた。
そして戻ってきたイブに殴られた、
「生えないじゃない、もう頭にきたあんたが新しいの作りなさい、じゃないとアダムとはもう口聞かないから」
「新しいの頑張って作るから口聞かないなんて言わないでよ~」
僕は生まれて初めて考えてものを作ろうとした、
今までは、何かを思えばそれが形になったのに、
イブに嫌われたくなくて必死に考えた。
できたそれは、
「おいしい」とは違って紫色で柔らかい美がたくさんついていた。
それをイブに差し出すと
「まぁこのくらいで許してあげるわ」っと言って、
何粒か実を分けてくれた、
僕たち二人並んでその実を食べた、
二人とも楽しそうな満面の笑顔で。
今思うとなんでイブがいない時あんな平然としていたのか、
まぁ理由はわかってる、
それはイブを知らなかったから、
人間も僕もだけど「嬉しい」や「楽しい」を知らなければ
それがないからって「悲しい」とは思わない、
だから「寂しい」と気づけた僕は幸運だね、
だって「悲しい」も知ってしまったけど
「嬉しい」や「楽しい」やイブに巡り会えたんだから。
皆んな、この世で一番悲しいことはね
「悲しい」を知らないことだってことは
忘れないでね。
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