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影が俺に掴みかかってきた。そして俺から俺を奪い取っていく。
あの日、俺は俺を捨てた。
だから俺は俺ではなくなった。
捨てたんならいらないよな
奴の目がそう嗤ってる。
違うんだ。俺は叫ぼうとした。だけど焼かれながらではもう声が出ない。やがて声さえも奪われた。
やめてくれ。
やめてくれ。
俺は俺なんだ。俺から俺を奪わないでくれ。俺にはもう俺しか残っていないんだ。だから頼む、やめてくれ。
心の中で懇願しても奴は嘲笑うだけ。
足を奪われた。
もう立っていられない。崩れる体。落下する頭。
俺は影の中へと墜ちていった。
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