1

10/10
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 影が俺に掴みかかってきた。そして俺から俺を奪い取っていく。  あの日、俺は俺を捨てた。  だから俺は俺ではなくなった。  捨てたんならいらないよな  奴の目がそう嗤ってる。  違うんだ。俺は叫ぼうとした。だけど焼かれながらではもう声が出ない。やがて声さえも奪われた。  やめてくれ。  やめてくれ。  俺は俺なんだ。俺から俺を奪わないでくれ。俺にはもう俺しか残っていないんだ。だから頼む、やめてくれ。  心の中で懇願しても奴は嘲笑うだけ。  足を奪われた。  もう立っていられない。崩れる体。落下する頭。  俺は影の中へと墜ちていった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!