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「地に堕ちた影を踏むな。因果は獰猛な猟犬だ。光に近づくな。光は影を生む。闇の中に息を殺して潜むんだ」
ガキの頃、爺ちゃんはよくそう俺に言い聞かせた。
俺の家系は呪われていた。由来は分からない。あったとしても知るすべはない。そもそも家系を追う手段すら今となっては散逸してしまっただろう。
それでも爺ちゃんの記憶の限りは追える。
ひい爺ちゃんは爺ちゃんが生まれた夜に米兵に強姦されて殺された。
誕生の報いとして死が与えられたのだ。
歌手だった俺の父ちゃんは十年前に大きな賞を取ることが内定した日の昼間に昔付き合っていた女に刺されて死んだ。
栄光は報復となって結実した。
爺ちゃんも因果に襲われたことがあるという。
俺の家には婆ちゃんも母ちゃんもいない。
つまりはそういう事だろう。
今では俺と爺ちゃんは東北の山間部にある寒村でひっそりと暮らしている。
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