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まあ、それでも、彼女の位置は単純な等速直線運動の方程式で予測できる。方程式だって決して冷たいばかりじゃない。今レスキュー部隊に連絡すれば、彼女が飛んでいく宙域に待機していてくれるだろう。そうすれば、酸欠状態が酷くなる前に、彼女も助かるはずだ。
ところが。
「……え、レスキュー部隊は来られない?」
俺は愕然とする。
『当然だろう!』さくら2の管制官が怒鳴り返す。『今どういう状況だと思ってんだ?事故の対応で、レスキューは全員そっちにかかりっきりだよ!』
……。
なんてこった……それは想定外だった。
おそらく、レスキューの手が空くまで数時間はかかる。それまでマリリンの酸素はとてももたない。俺の酸素を分け与えたくても、こちらだってギリギリの分しかない。
このことを、どうやってマリリンに伝えればいいのか……だが、話さないわけにはいかない。俺はGUARDチャンネルに周波数を戻す。
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『……どうして? 何であたしが死ななきゃならないの?』
「何度も説明しただろ……君はもう少し、物理を勉強しておくべきだったよ」
『……』
しばらく、無線からはマリリンがしゃくりあげているらしい声しか聞こえなかった。それでも、俺は言葉を続ける。
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