ドルフィンライダーの方程式

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「君が助かるためには……俺と席を代わるしかない。だがな……君がこの艇にくっついていたせいで、発進時の重心位置が微妙にずれたからな。マニュアルで針路を修正しなけりゃならんだろう。君にそれができるか? ってことだ。できなけりゃ、君だけじゃなく、さくら2で血液を待ってる重傷者たちも死ぬことになる」 『そんなこと……できるわけないよ……』即答だった。マリリンは涙声で続ける。『仮にあたしが操縦できたとしても、あたしの代わりにスキッパーが犠牲になるなんて……そんなの、耐えられないよ……悪いのは、密航したあたしなのに……だから、死ぬのはあたしだけでいい』 「……」 俺は少し驚いていた。てっきりヒステリックに泣き叫ぶものだ、と思っていた。 生意気だが、そんなに性格の悪い娘じゃないらしい。 「マリリン、遺言を残しておくか?家族や恋人に、さ。録音しておいてやるから」 とは言え、俺が何もしなくても、今までの会話だって全てフライトレコーダーに記録されているのだが。 『恋人なんか、いないよ……ずっと勉強が恋人みたいなものだったから。でも、お父さんやお母さん、お兄ちゃんには……最後に会いたかったな……』 「じゃ、家族宛だけでもいいさ」 『うん……それじゃ、始めるよ。お父さん、お母さん、お兄ちゃん……先立つ不孝を、お許しください……』 それっきり、無線は沈黙を続けた。 「……おい、どうした? それだけか?」     
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