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『……思いつかないよ……何を言ったらいいの? だって、今日死ぬなんて、全然思いもしなかったんだよ? 残すべき言葉なんて、何も考えてなかったよ……』
そしてマリリンは、再び嗚咽し始める。
『嫌だよ……死にたくないよ……せっかく夢だった、宇宙白血病の研究ができるようになったのに……人生、これからなのに……』
……。
俺は、何も言うことができなかった。できることなら、俺だって彼女を助けてやりたかった。だが……どう考えても、それは無理な話だった。
いや……ちょっと待てよ。
本当に、無理な話か?
出港時と違い、連絡艇の着港はハブポートへ、と決まっていた。ステーションの回転軸に当たる部分である。本来はここが宇宙ステーションの正式な港であり、ここなら大型の船でもなんでも停泊することができる。だが、ハブポートに着港するためには、スラスターによる針路修正と減速が必要だ。
しかし。
「さくら2」も「さくら1」と同じ直径で、同じ方向に同じ自転速度で回転している。つまり、「さくら2」のリムポートの線速度は、原理的に今の俺たちの艇の速度と全く同じなのだ。だから、リムポートに着港すれば、ほとんど減速しなくて済むじゃないか!
もちろん、それが禁じられているのはそれなりに理由がある。
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