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Ovo 竜と、卵 始まりの物語
母さんと引き離されて、どのくらいの年月がたっただろうか。
暗い霊廟に、僕はどのくらい閉じ込められているだろうか。
りぃんと涼やかな音がして、僕は顔をあげていた。
僕の吐いた花が、闇を蒼く照らしている。紫色をしたそれは結晶の花弁をつけ、風信子のような形をしていた。
花吐き。
僕は、そう呼ばれる存在だ。
死した人々の魂を結晶の花に変え、新たな命へと生まれ変わらせる存在。新たな命を紡ぐ存在が花吐きだと、兄さんは言っていた。
だからこそ僕は、この霊廟に閉じ込められている。
僕は神である始祖の竜の使いとして崇められ、外に出ることすらも許されない。
花吐きさまと呼ばれ、名前で呼んでくれる人もいない。
ヴィーヴォという名前が僕にはちゃんとついていたのに――
「名前、呼ばれてないなぁ……」
呟くと、僕の周囲に咲く花がりぃんと鳴って返事をくれた。
「君たちがいるから、寂しくないよ」
僕は花に微笑みかける。僕の吐いた花たちは、僕のことを慕ってくれている。
だから、こうして独りぼっちの僕のために、話し相手になってくれるのだ。
でも――
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