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「君たちは、ここにずっといちゃいけない。僕みたいに、囚われのお姫様になっちゃだめだよ……」
彼らは、僕のことが心配でこの霊廟に留まってくれている。でも、本当は新たな命へと生まれ変わるために、ここから離れなくてはいけない存在なのだ。
僕がそれを躊躇わせている。
僕が独りにならないように、花たちはここにいてくれる。
僕は天井を仰いだ。
星が見えるはずの空は、闇に包まれた半円形のドームで覆われている。眼を凝らしてみせると、そこに空を飛び回る竜のレリーフが描かれているのがわかる。
レリーフの竜たちは、小さな人々を背に乗せ空を飛び回っていた。
虚ろ竜だ。
僕たちがいるこの世界の上空には、異世界を背に乗せた竜たちが飛ぶ世界、中ツ空がある。竜たちの背にある世界には、太陽と呼ばれる眩しい光があって、世界を照らしているそうだ。
僕たちの住む水底の世界は、いつも闇夜に閉ざされているというのに。
「見てみたいな、太陽……」
そっとレリーフに手を翳し、僕は呟く。
光が見たい。闇じゃなくて、寂しい気持ちを忘れさせてくれるぐらい綺麗な光が。
遠くに行きたい。
虚ろ竜の背に乗って、こんな暗い寂しい世界からいなくなってしまいたい。
「連れてってよ……。僕も君たちのところへ……」
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